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【多事業展開の雄がついに登場!】売り先を変えただけで売上倍増!100億超のグループ社長が駆け出し時代にやったこと【岩佐と紐解く戦略農業#15】

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■プロフィール
■木内博一さん

株式会社和郷 代表取締役、農事組合法人和郷園 代表理事
1967年千葉県生まれ。農業者大学校を卒業後、1990年に就農。翌年、有志5人で野菜の直販を開始。「和のマネジメントと郷の精神」で約90の農家をグループ化。約50社の取引先に共通ブランドの野菜を販売。事業地域に密着した循環型農業のビジネスモデルを構築している。

■岩佐大輝さん

株式会社GRA代表取締役CEO
1977年、宮城県山元町生まれ。大学在学中に起業し、日本及び海外で複数の法人のトップを務める。2011年の東日本大震災後に、大きな被害を受けた故郷山元町の復興を目的にGRAを設立。著書は『99%の絶望の中に「1%のチャンス」は実る』(ダイヤモンド社)他。

■横山拓哉

株式会社マイナビ 地域活性CSV事業部 事業部長
北海道出身。国内外大手300社以上への採用支援、地域創生事業部門などで企画・サービスの立ち上げを経験。2023年4月より同事業部長就任。「農家をもっと豊かに」をテーマに、全国の農家の声に耳を傾け、奔走中。

業界のリーディングカンパニー、和郷

岩佐:今日の戦略農業はいよいよ和郷園の木内さんです。

横山:レジェンドですね。

岩佐:私が農業を始めた時にさまざまなことを教えていただいた師匠ですね。木内さんといえば、本当に農業界で知らない人はいない。木内さんは就農してから、もう何年目ですか。

木内:36年目。代々続く農家だけれど、おふくろと、ばあさんがやってたぐらいで。おやじは年間8カ月くらい、近くのゴボウ問屋に働きに行って、合間に帰ってきて機械作業やって。

岩佐:兼業といえば兼業ではあった。

木内:高校を卒業して、農業大学校に通って。当日は、全寮制で寮費と食費と学費を合わせても安いものだった。

岩佐:木内さんのことだから、きちんと勉強していたかはさておき(笑)。

木内:いや、真面目な勉強家でしたよ。だから今があるわけですよ。

岩佐:卒業して22歳で千葉の実家で就農して、そこから爆速で今に至っているイメージが私にはあります。

客観的に見た農業経営

木内:僕は農業大学校出身でも座学だけで、技術系ではないんです。だからこそ経営視点で農業を見てみたんですよね。農業を食料製造業だと捉えていて。だから製造原価を把握して販売しないと持続できない。けれど当時、うちも周りの農家も全く把握していなかった。

岩佐:感覚でやってたんですね。そこで新しい作物を始めたりしたんですか。

木内:いや、マーケットの大きい市場に行くようにして。当時は下道で2時間かけて、茂原市の市場に卸していましたけれど、高速道路なら同じ時間で大田市場に行けた。そこで知り合った人からの紹介を機にスーパーマーケットの明治屋や紀ノ国屋との取引も始まりました。僕が大学校を卒業した当時は、バブル景気の頃。今みたいに農業ブームではなかった。だからブルーオーシャンだったんですよ。市場に行ったら「農業をやって、産直品を提案してくれるなんて、お前ぐらいしか居ない」って。

岩佐:なるほど。

木内:それとそれまでは白色申告だったのを、青色申告に変えて売上が明確になった。当時は年商730万円くらい。コメが1ヘクタール、サツマイモ、ゴボウやジャガイモなどで2ヘクタール弱くらい。それが作物は全く変えずに、売り先を変えただけで年商は1300万円になった。それが最初の成功の実感でした。b

岩佐:明治屋や紀ノ国屋が、木内さんと取引をするようになった理由は何ですかね。

木内:圧倒的に小回りが利いたんですよね。人を雇っていなかったから自分で畑作業もしていたけれど、注文の電話も取らなければならない。だから携帯電話を入れました。加入金だけで27万円ぐらい掛かった。けれど、市場のバイヤーに連絡すると2日とかかかるところを、「明日もう100本、追加してくれる?」「いいですよ」みたいな感じで、その日の夕方にはトラックで大田市場まで運ぶ。だから鮮度も良いし、おいしいものを届けられた。

和郷の圃場(株式会社和郷のHPより)

加工による付加価値で成長

岩佐:小回りの良さで売上を倍にした次のステップは何でしょう?

木内:カットゴボウを始めるんですよ。雨で畑仕事が休みになると朝5時くらいに市場に行き、明治屋のバイヤーさんに挨拶して。バックヤードでパートのおばちゃんが泥の付いたゴボウを大変そうに洗っている姿とか、そのゴボウを奇麗にカットしてラッピングしている様子も見てて。そこで「僕がやってあげましょうか」と。サンプルを持って行って、今度は、生協のバイヤーさんと知り合って取引が始まる。

岩佐:「もっと欲しい」という話にもなりませんでしたか。

木内:そうそう。うちのおやじは百馬力ぐらいの大型のトラクターでゴボウ掘りをやっていたんですよ。ゴボウ掘りは特殊な技術も必要で、大体10アールを掘り取るのに10万円の経費が掛かる。

岩佐:結構かかりますね。

木内:その年は相場が暴落して、売ってもギリギリ10万円になるかどうか。けれどそのゴボウが、カットゴボウにして大ヒット。付加価値によって10倍くらいの値段になった。自分の家のゴボウは全部売れたから、困っている農家から、業者の3倍くらいの値段で買い上げましたね。結局、その年には年商が1億3000万円ぐらいに。

岩佐:それはすごい! 市場だと安く買われていたところで、木内さんは3倍ぐらいで買った。ゴボウの洗い場や工場はどうしたんですか。

木内:加工場も建てましたよ。倉庫も作って。就農して36年ですけれど、毎年何かしら建てていますよ。

岩佐:いわゆる6次産業化みたいなことが始まったんですね。

加工から流通まで一貫して行う和郷(株式会社和郷のHPより)

農業生産者の自立に向けて

岩佐:農事組合法人和郷園ができたのは木内さんが何歳の頃ですか。

木内: 30歳になるくらい。カットゴボウから法人化までは3年くらいかかっています。市場流通が一般的で、自分たちでものを売ることには抵抗もあった時代だったので。そこからまた加工場を作り、加工品もブランディングして。バブルが崩壊して「産業化によって雇用を作ってくれ」と言われた時代でもあり、雇用を作るための加工場でもありました。

岩佐:また更に付加価値がついたと。次は何をやったんですか。

木内:農産物はやっぱり自然にできるものだから、規格外のものもできてくる。その規格外品の有効利用と、雇用を作るために、冷凍工場を作りました。ホウレンソウ、コマツナ、サツマイモ、ゴボウ、ブロッコリー、ヤマトイモ、トウモロコシとか。一次加工はどちらかというとスーパーマーケットからのニーズがあって。だから生協さんのPBがうちの冷凍工場の売上のほとんど。

岩佐:相当、雇用が増えたんじゃないですか。

木内:一気に増えましたよ。パートさんだけで100人以上居る。この冷凍工場もアグリビジネスの重要なパーツ。これを抜くと、流通がうまくいきません。

岩佐:農業法人として農作物を作ってもいるし、農産物を他の農家さんから集めてもいる。和郷園で生産した農産物を、加工や販売をする株式会社和郷を経由せずに売るケースもありますか?

木内::ありますよ。「生産者の自立」は和郷園の理念だから。今までの農家は、作るだけで消費者のニーズやマーケットの環境の変化に対して考えてこなかった。でも和郷から、和郷園のメンバーである農家や農業法人に、お客さまを紹介することで、そのメンバーたちの認識が「『売れるもの』を作ることが当たり前」に変わっていく。メンバーは作ったものを100%、うちに売らなくてもいい。もっと良い条件の売り先があれば「どうぞそっちに売って」という関係。

岩佐::フェアでフラットな関係にしている。

木内::よく自転車の前輪と後輪と例えています。ハンドルを握るのは我々、経営者。後輪に和郷園の生産者が居たら、前輪には和郷の営業の職員がいる。我々は経営を見る。けれど職員が、生産者が満足するような売り先を紹介できなければ、自分たちの未来はない。

岩佐::緊張感を持って両方やっていかないといけない。どっちかのタイヤがパンクしたら動かなくなるわけですね。

木内::そうです。いたってシンプルです。

まとめ

岩佐:和郷のすごいポイントを3つ、振り返りたいと思います。

和郷グループの農業戦略のポイント
四の五の言わずにどぶ板い営業 現場に行くからこそ潜在的ニーズを掴める。まずは現場に行き、課題解決に取り組む。
プロダクトアウトではなくマーケットイン 消費者目線のニーズに合わせた付加価値を考える。マーケットの変化を把握した投資により新たな雇用も生まれる。
圧倒的な投資で構造優位を作る ここぞという時は思い切って投資を行い、二番手の追随を許さないレベルまで上がる。正しい投資判断が出来るための目を養っていくことも大事。
とにかく行動して常に学ぶ 農業経営を客観的に判断することで、その先の行動が変わってくる。また行動の量・早さが売上につながっている。

岩佐:以上、3つが和郷のポイントでした。後編では、和郷の最近の取り組みとこれからの農業について、レジェンド農家の目線で語っていただきます。お楽しみに!

(編集協力:三坂輝プロダクション)


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